忘れられていた物語も
覚えていない物語も
どこかでぴかぴか光っていて
目を閉じれば
目の前に
]]>ああだ、こうだ、を受け止めて今日の調子が決まる。
何か事件が起きた時、トレンドを確認する。
何か事件が起きた時、トレンドで確認する。
不安も安心も心配も、すべて、他人がしてくれる。
少しでも、世界から取り残されないように、トレンドを。
]]>僕はすっかり弱ってしまった両親のために、人魚を探した。
言い伝えによる人魚は、人間の話を好むので、何か涙を誘う話をしなくてはならない。
僕に、そんな、人魚が涙するようなお話ができるだろうか。
「ちょっとやそっとの話じゃ、涙なんか出さないわよ?」
なんか言い伝えからはまったく想像つかない現代的な容姿とテンプレで、僕はちょっと困った。
もう、こっちが泣きそうだ。
「身の上話とか飽き飽きしてるのよね。どいつもこいつも不幸自慢かよって、」
見の上話くらいしか思いついていなかったので、僕はもうどうしたらいいのかわからなかった。
「面白い話よ。悲しい話は聞き飽きたわ。もっと面白い話を聞かせて?」
とりあえず、ツイッターのトレンド入りしそうなネタを話してみたが、あんまりピンとこないようだ。
仕方ないので、日々の暮らしとか、自分の好きなこととか、最近あったことを話してみた。
「あ〜〜〜もうなんか眠くなってきたわ。ほんと、人間って面倒〜〜〜」
ふあああ、と大あくびをすると人魚の目から涙がこぼれた。
うまく小瓶に納めると、人魚がくすくす笑っていた。
「運のいい人間ね。今度来る時のために、もっと楽しい思い出を作りなさいよ」
何に満足したのかわからないが、僕は無事、人魚の涙を手に入れたので、めでたしめでたし。
]]>
誰にも見られていない気がして
少しでも長く、長く
]]>明日の私はきっと、意見を変えてしまうのだろう
]]>
面と向かって、何か言われた記憶はない。
ただ、何をしているにも、私の行動を責めている誰かがいるのだ。
運転をしている時も、買い物をしている時も、家にいる時も、もっとスピードを上げられないのか、買い物カゴがぶつかりそうになったじゃないか、何もしないでただ家にいるなんていい身分だなあ。
その誰かなんて居ないことを私は知っているのだ。だけれど、私を責めている誰かがいるような気がするのだ。気がするだけなのだから、これは私自身の問題なのだ。
きっと、両親も私を責めているにちがいない。
きっと、兄弟も私を責めているにちがいない。
きっと、友人達だって私を責めているにちがいない。
今、この文章を読んだあなただって、
何を馬鹿なことを考えているんだと、
責めるにちがいないんだ。
]]>桜の開花時期がずれにずれてしまい、固いつぼ見になってしまった。
彼女は、どこかおいしいものを食べさせてと笑った。
花より団子、それはそれでいいのだけど。
満開の桜の下、喜ぶ顔が見たかったのだ。
就寝前、彼女からのライン。
「今日は楽しかったね。今度は桜が咲いてからにしようね」
別に、今日じゃなくて、よかったんだ。
予定通りじゃなくってがっかりしていたから、次のことを忘れていた。
桜が咲いたら、また見にいけばいい。
来年も、再来年も、桜が咲いたら、見に行けばいい。
]]>他人の吐いた空気を吸わないためだ。
拡散されていないそれは、まだ「他人」だ。
吸い込んでしまったら、「それ」になってしまう。
駅のホームはつらい。
足早に人込みを抜け出して、大きく深呼吸する。
「自分」が拡散してしまうのには時間はかからない。
あっという間だ。もう、元の自分に戻ることはできない。
できれば、一人暮らしをしたい。
まだ、未成年の私は両親が許してくれない。
同じ部屋に「他人」がいることは、つらい。
少しでも吸い込まないように、マスクが欠かせない。
できれば、将来、他人と関わらずに暮らしたい。
一体、どんな職業になればそれが許されるのだろうか。
たくさん勉強をして、学ばなくてはならない。
疲弊していた。
ふと、気づいてしまったのがいけなかった。
太陽がこっちを見ていたのだ。
認識してはいけなかった。扉が開いてしまった。
「こんにちは、お嬢さん。私は未来からきた暗殺者です。あなたは将来、とんでもない開発に携わります。未来は凍結しかけています。それもこれも、あなたの潔癖が原因です。私はあなたの潔癖を治すためにやってきました。」
男は、監視と言って、私から離れなくなってしまった。
「他人」にはなぜか、私の彼氏に見えているらしい。
認識が歪んでいた。彼を認識する圏内に入った瞬間に、私の彼氏と認識されるようだ。
とても祝福された。他人を拒絶していた私が、恋人を作ったことになっているのだ。
絶望だ。さらに根詰めて勉強するしかなかった。
両親は何を考えているのか、彼が私の部屋に居候しても何も言ってこなかった。
彼の何が、脳の認知に影響を与えているのか理解できなかった。
「それは、君が見つけたんだ」
私の開発のせいで、私の過去が歪んでいく。私は勉強をやめた。
マスクを外し、人込みの中で息を吸った。
他人の近くでおしゃべりをして、生まれて初めてインフルエンザにかかった。
彼の認知がだんだん薄れていった。
私の彼氏から、いとこになり、近所の人になり、やがて「他人」になった。
私はもう、平然と友達と鍋パーティができるようになっていた。
大学生になって、自然とまた勉強をしていた。
「彼」のことはすっかり忘れていたが、どこに行ってしまったのだろうか。
キャンパス内で、似たような人をみかけた気がするが、似たような人なのだろう。
たまに太陽見上げるが、もう、こちらをちっとも見ていなかった。
]]>
雷鳴を遠くに感じていた。
もしも、脳内の電気信号が音を伴っていたら大変なことになっていただろう。
いつも轟々と、大きな音が休む暇なく連続してく。
ずっとまとわりつくような、頭痛がそうなのかもしれない。
耳の穴に指を入れた時に聞こえる血液の流れる音とか、唾を飲み込む音とか、
雷鳴はそんなもの気にせずに全てかき消してくれる。
偏桃体が、勝手に好き嫌いを選り好んで決めつけてしまう。
その時思ったことを、表現しろと言われても、
言葉を選んでしまった時点で、もうその気持ちとはかけ離れたものになってしまっている。
一般的な、みんなに分かりやすい、あなたが勝手に分かったつもりになった言葉に。
言ってくれなきゃ分からないと、表現しろと、言語化することを強制される。
言葉にして、ただ一つのものに絞ってしまって、そのあぶれてしまったものは、どうしたらいい?
きっと、あぶれてこぼれて流れてしまったものが本質で、本当で、大切だったはずなのに。
ぴかぴかにして、綺麗にして、象徴化されたもので、なんやかんや。
秘密を共有できなくなってしまった時代に、もう、ゆびきりげんまんは必要ない。
]]>だって、毎日おいしいケーキを食べられると思ったから。
私は本気だった。
お菓子作りの本を買ってもらって、自分で分量を量り、毎日お菓子を作った。
家族は私の作った失敗さくをおいしいと言って食べてくれた。
ある日、燃えるゴミの日の朝、食べ残されたお菓子が袋の中に入っているのを見て、二度とお菓子は作らなくなった。
次になりたくなったのは、ペットショップの店員だ。
だって、動物がかわいかったから。
中学校の職場体験でペットショップに体験に行ったら、アレルギーが出て、それから動物はダメになった。
習い事でやっていた水泳がそこそこ上手かったから、プロの選手になろうと思った。
高校で自分の実力を知って、水泳部は途中でやめた。
勉強もあんまりしなくなった。
保育園の先生になろうと思って、専門学校に進学した。
ぴーぴーわめく子どもに逆切れして、実習先でめちゃくちゃ怒られて中退した。
アルバイトはなんだかかっこ悪い気がして、やったことがない。
ばあちゃんにすすめられて野菜を育て始めた。
早起きしなくちゃいけないからさぼってばっかりだったけど、ほとんどばあちゃんが育てた野菜を家族がおいしいと言って食べた。
農家の婚活に連れていかれたけど嫁姑問題が怖そうだったから適当に受け流した、
ところまで考えて、やっぱり私はケーキ屋さんになったほうがいいのではないかと思っている。
高校三年生になり、本気で進路を考え始めた。
プロの水泳選手は無理だ。挫折を知った。できないことはできないし、やりたいことができるわけじゃない。
きっと子どもは好きじゃないし、しゃべらないケーキのほうが性に合う。
あの時のお菓子の本はどこにしまっただろうか。
帰ったら、また食べきれないくらいのお菓子を作ってみよう。
]]>だってもう、なんかどこでもチョコチョコしか言ってないじゃない!
チョコレートが食べたい。
口の中で頬張れば、体温でじわっと溶けていくチョコ。
かみ砕いて、口中で味わうのもいいし、じっくりなめきってしまうのもいい。
もう、チョコレートが食べたい。
ここまでチョコレートが食べたくなってくると、ちょっとやそっとのチョコレートじゃ物足りなくなってくる。
そう、今、自分が一番欲している、最高のチョコレートが食べたいのだ。
食べた後に、「あ〜これじゃないんだよな〜」という思いはしたくないのだ!!!
だからと言って、そう簡単に自分の食べたいチョコが見つかるはずがない。
コンビニに入ってみれば、なんとまあ、高級なチョコが売っていてびっくりする。
いつもながらの駄菓子だっていいはずだ。高ければいいというわけじゃない。
そう、今、一番欲しているチョコ!体が、脳が、神経が、幸福を呼び覚ますチョコレートが!!!
今までに食べたことのあるチョコレートを、味を確かめながら思い出してみる。
チョコと言っても、まずはミルク、ブラック、ホワイト、色々な種類がある。
正直、ホワイトチョコも好きだ。ホワイトチョコはまたチョコレートとは別物だと思う。
だって、チョコだけどチョコじゃないんだもん!わかる?この気持分かる???
なんというか、ホワイトチョコでしか味わえないあの、ねっちょりともったりとした、白い感じ!
普通のチョコもいいけど、ホワイトチョコもいいよね。でも食べ過ぎると気持ち悪くなるんだよね。
そう、最高のチョコを求めていろいろ味見をしてしまっては、気分が悪くなってしまう。
それを避けるためにも、最高のチョコを、今、すぐ、一口で食べなければ!
あ〜〜〜チョコレートが食べたい!
]]>世代交代は必要ない、思考だけが宙ぶらりんで
うまれた時から考える病気
欲しいものから順番に食べて、足りなくなっても知らんぷり
うまれた時から考える病気
記憶は記録にすり替わって、残った頭はすっからかんで
うまれた時から考える病気
こぼれ落ちていく言葉たちを、親指ではね返している
]]>
キャラクターだ。と、勝手に俺は考える。
まずは魅力的なキャラクターの設定を考える。
容姿はすっごい大切!他のキャラとかぶってしまうような、そんな主人公は要らない。
それから名前。これもとっても大切!赤ちゃん用の本とか買い漁って、唯一無二の名前を探す。
そこまで決めてしまえば、あとはキャラクター達が勝手に物語を進めてくれる。
でも、それじゃあ進まない。
ゴールが見えなくては、物語が終わらないんだ。
うーーーん、とパソコンの前で俺はうなだれた。
いつだってそうだ。設定を考えたり、キャラクターを考えるのは大好きだ。
だけど、物語の終わりを考えることが苦手で、なんだ、その、物語が終わったことがない。
広げっぱなしのストーリーに取り残された登場人物たち。
生きている、のだろうか。
そうやって、放りっぱなしにしてきたやつらは。
物語の始まるを考えるのは楽しい。わくわくして、幕が上がって、どきどきして。
だけど、物語の終わりを考えるのは好きじゃない。拍手なんかいらない。
紡いでは消して、紡いでは消して、物語は、ストーリーは、転がっていく。
結局、今日も、まとまりなく終わっていく。
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目が覚めると、体が重かった。
体調が悪いのではない、重心が、違う。
ふらふらと起き上がると、
「いたっ…!」
何か、額を固い物でぶつえけた。
私の部屋に、そんなものはない。
そこそこの階級の、そこそこの家系の、そこそこの、
だから、こんな、自分の声を聞いて、驚いた。
「え?……は?……何これ?」
見たことのない部屋、見たことのない文字、見たことのない体。
窓らしきものを開けて、愕然とした。
これは、私がいた世界ではない。
ここは、一体どこだ…?
姿見だと思われるものに自分を映し、驚愕した。
おっさんだった…。
そこに映っているのは、トランクス一枚の、冴えない、おっさんだった。
異世界美少女が転生したのは、「ただのおっさん」だった!?
見た目はおっさん、中身は美少女。果たして、元の世界に戻れるのか?!
]]>主人公にはなれないから
輪の中心には行けないんだ
中途半端だ
本当のことはわからないから
本音は言えないんだ
無関係者だ
覗いていただけだから
知らないことばかりだ
エキストラだ
役割をこなしているから
終わったらおしまいなんだ
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