未消化排出物

     お は な し
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | - | -
愛の印
じょぼじょぼじょぼこぽこぽ……。カラカラカラ、ジャー。今日も体の中の一部が私から離れていく。さようなら要らないものよ。腎臓よ、ありがとう。私は元気です。
借金はいくらほど少なくなっただろう。借金を返すために働く。うん、何度聞いてもなんてすばらしい労働条件だろう。生きていくために働くなんておっくうだ。借金を返す。なんて簡潔でシンプルな答え。
「好きよ、好きなの、好きなのよ」
「わかったよ、じゃ、ここにサインと印鑑」
そうして愛に生きてきたら、借金だけが残されていた。私を生かすのはこの借金に違いない。ああ、この借金をすべて返してしまったらどうしよう。私はどうして生きていこう。とても、愛しい、彼との恋の記憶。きっと借金が無くなる頃には私の体から要らないものは出尽くしてしまって、干からびてしまうのだ。そうして、命を終えるのだろう。
じょぼじょぼじょぼ……。ジャー。さあどんどん出ていけ私の要らないものよ。私は、元気です。
19:58 | いみはない | comments(0) | -
退屈する話
見渡す限りの人間が、同じような格好をしている。
どこかで見たことあるような。
なんてつまらない満足感。
満たされるなんて、とんだ退屈だ。


大きくなる話し声
大きくなる笑い声
まるで、沈黙が重大な犯罪と思わせるような。
耳を塞ぎたくなるような退屈。


同じことを繰り返す、先の見えてしまう未来に。
なんて退屈。
ぽっかりと口を空けた普通に、踊らされて。


退屈すぎて
退屈すぎて
退屈すぎて

懐柔された体に支配されていくばかり。
21:33 | いみはある | comments(0) | -
悲しい恋の話
 嘘つきな君と欲張りな僕。
 それは悲しい恋だった。

 君の嘘つきには慣れているつもりだったんだ。あの日もそんなものは嘘だと思ってせせら笑っていたけど、よく考えてみたら、この恋自体が嘘だったんだね。ごめんね。ありがとう。こんな、悲しい恋につき合わせてしまって。

「コミュニケーションなんて苦手」
「どうして?」
「こうやってどんどん嘘を重ねて積み上げていくのよ。高い壁よ。怖くないの?」
「だって、何も見えないじゃないか」
「見えないに決まっているでしょうバカね。もうあんたなんて見えないのよ。すごく高くて分厚い壁なんだから。初めて出合った時からコツコツ積み上げてきたんだからね」
「それは、砦?」
「まあ、そんなもんよ」
「だったら、素晴らしいよ。僕達はその砦のおかげで傷つけられることはないんだ。それに安心して、その砦は僕のものさ」

 こんな欲張りな僕でごめんね。

「もう、わからないの。アンタと一緒に居たくないの。でも居ないと嫌なの。どっちも嫌なの。気持ち悪いの。出て行ってよ、絶対に離れないでよ。決めなくちゃいけないの、どうすればいいの?」
「ごめんね、そうやって僕はいつも君を追い詰めていたんだね」
「謝らないでよ、土下座しなさいよ、私はかわいそうなの、かわいそうじゃないの、同情しないでよ、同情してよ…」
「君はそんな、嘘をつかなくてよかったんだ。君は嘘つきでよかったんだ。もういいよ。大丈夫だよ。君が全部僕のものになればいいんだから」

 笑顔。

 嘘を重ねすぎて本当の自分を見失ってしまった君を、僕はただ、欲張ることしかできなかった。君が僕のものになって、僕が君の本当を決めてしまえばいい。君の嘘を決めてしまえばいい。

 それは悲しい恋だった。
 好きを好きだと肯定できず、嫌いを嫌いと否定できず、嘘と嘘と嘘ばかりで本当を作り上げてしまった
 それでも、僕にとっては恋だったのだ。
00:13 | かなしい | comments(0) | -
どちらにしようかな
どっちがいい?
結局選んだことを後悔するのだからどちらでもいい
どっちがいい?
こっちがいいけど、そっちも気になるし、困った
どっちがいい?
絶対にこっちに決まっている。そうでしょ、そうでしょ
どっちがいい?
はんぶんづづには出来ないのですか?
どっちがいい?
どちらも要りません
どっちがいい?
天の神さまの言う通り!
22:39 | いみはない | comments(0) | -
限りないAとTとCとG
見てもわからないような光に
聞いてもわからにような音に
舐めてもわからないような味に
もう、進化は必要ないというのに
01:15 | いみはない | comments(0) | -
【不毛な職業】
「今日も来た」
「今日も来たわね」
不毛な職業である。
決着は実に完結であっさりしていて、潔い。
「今日こそはっきりさせる」
「今日こそはっきりさせるのね」
はじまりがいつだったのかは忘れてしまったけど、
おわりがいつになるかも見当つかない。
「心が一体どこにあるのか」
患者はそう言って、深々とお辞儀をした。
そして医者は、
「脳に決まっているでしょう。心臓なんてポンプですよ。鼓動の変動なんて神経の影響なんですから。ほら、交感神経と副交感神経」
元魔法使いであった看護師が放心した患者を連れて行く。
「不毛な職業です」
12:06 | いみはある | comments(0) | -
婚約初夜
全て愛してくれるひとがよかった。なかなか難しいだろうが、ゆずれなかった。許し合うなんて興ざめだ。愛は完全な場所になければならない。私の髪の先から足の指まですべて愛でてくれる人じゃなければ。
そうして見つけた彼は最高だ。私の全てを愛してくれる。それはもう、骨の髄まで。なんて幸せなのだろう。標本のように体を開いて、甘い囁き。君の内臓は完璧だよ。理想的だ。何より骨の曲線の美しさ。どんな見本よりも完璧だ。こんな君を愛せる僕はなんて幸せなのだろう。
愛される痛みは、なんていう甘美。麻酔なんていらない。この痛みの全てが愛されている証拠なのだから。ああ、なんて美しい心の臓!鼓動は早くなるばかり。
22:58 | きもちわるい | comments(0) | -
カウントアップ
通り過ぎた交差点からスピードを出した車が飛び出していった。一回。遠くの地方で地震が起こった。二回。バスに乗っていると、交通事故現場を通りすぎた。三回。知らない場所で、無差別殺人が起こった。四回。どこかの病院で医療ミスが起きた。五回。名前もわからない国で、爆発テロが起きている。六回。七回。八回。九回。今日あるはずだった私の死は、一体何にすり替えられたのだろう。
22:47 | いみはない | comments(0) | -